生活ブランド百花

ブランドとは何か？

生活ブランド百花／1

このシリーズは、日々の生活の中にあふれているさまざまなブランドについて、その意味や役割を社会・生活との関係から考えてみようというものです。
今回は、シリーズのスタートにあたって、まずブランドとはそもそも何か、ということを分かりやすく説明してみたいと思います。
図を見てください。これはブランドを取り巻く環境を簡単にまとめたものです。まずブランドの条件ですが、それは他の製品にはない価値の源泉とも言えるものをそなえていることです。それは、人物であったり伝統であったりさまざまですが、他では決して真似のできないものほどブランドを強くできます。例えば「シャネル」であり「コカ・コーラ」です。
次にブランドの要素ですが、それには音、文字、デザインの３つがあります。音は読み方、文字は書き方、デザインは独特の書体ということです。このような要素を集めて特徴的な名前と形を作るのは、数ある同様の製品の中から一目で自社の製品を見つけてもらうためです。
最後にその意味ですが、それには売る側と買う側の双方にとっての意味があります。売る側（＝企業）からすると、広告・宣伝やプロモーションをするのはブランドを覚えてもらって指名買いしてもらうためですから、ブランドは生活者に対する製品の訴求記号といえます。一方、買う側（＝生活者）からすると、いろいろある似たような製品の中から自分の買いたい製品を選ぶための目印みたいなものですから、いわば選択記号といえます。
しかし、ブランドはそもそも製品を買ってもらうために企業が作るものですから、生活者に選択記号として認めてもらって初めてブランドになると考えたほうがいいでしょう。
ブランドについての注意を、もう２点ほど付け加えましょう。１点はブランドと価格の関係です。ブランド品は、即ち高級品というわけではありません。一缶１１０円でも「コカ・コーラ」は世界有数のブランドです。
もう１点はブランドの選び方です。ブランドは始めにふれたように価値の源泉をもって初めてブランドになる条件を満たします。その条件を考えることで自分の本当に買いたい物かどうかを判断するのも、これからの買い物上手になるコツかもしれません。（月刊「PL」'95年1月号掲載）

ブランドネットワーク　インセプト
マネージャー　渋谷　清

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