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キャラメルの小箱

キャラメルスクラップ

ビニールパッケージの赤い細い紐をくるりとほどき、小さい箱の方から中身を確かめてみる。それは、開けるまでの期待感を満たしてくれる程ではないが、ちょっと得した気分と「次はもっと」というあこがれみたいな気持ちをおまけしてくれる。キャラメル。あれは子供の頃、自分で手に入れる事のできる大きな幸せだったのかもしれない。
　もうすっかり、こんなわくわく感から縁遠くなってきたように思う。３才の息子をスーパーに連れていくと駄菓子コーナーに飛んでいき、すわりこみながら細い長い箱を握りしめ、陳列棚の手前側に沿って「ガタン、ガタン」とすべらせていた。とりあげて見てみると新幹線「こまち」の写真とビスケットも少々入っているらしい事、そしてぎょっとするような値段がついていた。思わず、私は棚に返そうとした。が、頭の中で運転手になりきっている彼にはとんでもないことだった。ひどくダダをこねられるのもいやで、結局買ってあげることにした。
　確かに彼のわくわくした気持ちを大事にしたつもりだったが、少し違う気がしている。
　私達の頃は何が入っているかわからない分、「何かな、何かな」と想像をふくらませる数秒感があり、そこは大人になってから覚えた値踏みやら、「どうせチャチなもの…」というようなシラケた気持ちはなかった。でも、彼が手に入れた箱には中身と同じ写真がのっていて、家にはまた似たような新幹線がいくつか忘れ去られていた。新幹線を運転する想像はできてもそれ以上は広がらない。
　彼や私の周りのみんなが「ちょっと得した気分」と「次はもっと」という期待感を抱けることって、どこに隠れているのだろう。時々見つけて報告します。

Y o s h i e　

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